インタビュー
里親委託率43.8%!静岡市里親家庭支援センターでインタビュー
8月19日(水)に静岡市の里親支援機関である「静岡市里親家庭支援センター」を訪問し、静岡市里親会会長の眞保和彦さんと同センター事務局長の望月秀樹さんにお話をお伺いしてきました。
里親委託率43.8%!
静岡市の里親委託率の高さはご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、H27年4月1日の時点で里親委託率は43.8%となっており、全国トップクラスの水準です。そんな静岡市もH17年に政令指定都市に移行した時点では、里親委託児童数18人(里親委託率14.9%)でしたが、同センターや里親会、行政の熱心な取り組みにより、この10年間で委託児童数は60人(43.8%)と3割近くも委託率を伸ばしています。静岡市の第3次静岡市総合計画では平成30年までに里親委託率50%を目標に掲げていますが、実現の可能性は十分あるように感じられます。
静岡市の里親支援の取り組み
今回の訪問で、静岡市の取り組みの特筆すべき点は、「里親委託率の高さ」だけでなく、里親養育の質や不調の少なさにあると感じました。その要因として考えられることは大きく2つ。まず、ひとつは、全国で唯一、啓発活動、里親研修、委託後の相談支援まで措置権を除く里親支援業務全般をセンターが一貫して受託していることが挙げられます。里親の啓発や申請段階からセンターが里親候補者にかかわり、委託後の相談・支援もその窓口となります。里親の立場で考えると、定期的に異動のある行政の職員ではなく、同センターが一貫して支援を行うことは、困ったときに頼れる存在が同じであり、ワンストップの支援につながっていると考えられます。
センターは①啓発、②研修、③相談・支援の3本柱の活動を全てセットで行う重要性を下記のように指摘しています。「里親の数を増やすことは当然であるが、里親に委託される子どもは、様々な形での育てづらさが表れることが多く、里親認定に係る丁寧な説明と適合したマッチングに配慮した調整や養育技術の向上のための研修が欠かせないうえ、里親が抱える養育上の不安や悩みを気軽に相談できる体制や里親を孤立させないための里親同士の相互交流など、きめ細やかな里親支援の仕組が求められる。しかも、これら3本柱の事業は、どれかを行えばよいというものではなく、3本柱の事業をセットとして行う事が重要で、そのためには、一の支援機関がこれら業務を一貫して担当することが望ましい」(「平成27年度 里親家庭支援センター業務について」より抜粋)
もうひとつは、申請段階から里親の候補者が里親サロンに参加するなど、委託前から里親同士の関係を築いていることが挙げられます。委託を受ける前から、里親サロンに参加することで先輩里親のやりがいや苦労を聞くことができ、そこでの交流が委託後の協力関係にもつながっていると考えられます。厳しい審査や充実した研修によって個々の家庭の養育の質を上げることはとても重要ですが、周りのサポート体制があることは里親の養育の質を保ち、それを向上させることにもつながるように思いました。今回の訪問の際に、眞保さんや望月さんがおっしゃっていた「里親さん同士がとても協力的」というのは、里親が頼れるひとが周囲にいるという点で、養育の質を維持するポイントになっているように感じます。
静岡市はH17年に政令指定都市となりましたが、その時に独立した静岡市里親会の初代会長が元児童相談所の所長であり、子どもは家庭で暮らすべきだという強い思いで積極的に活動してきた経緯があるそうです。H22年に里親会が「里親家庭支援センター」をNPO法人として設立したことから、センターと里親会は事務局をシェアし、綿密な協力関係を保っています。
H27年4月時点で静岡市の里親委託率は43.8%。里親委託児童数は60人、乳児院・児童養護施設で暮らす児童の数は77人となっています。急な委託の依頼でも快く応じて一時保護的な役割をしてくれる里親家庭もあるそうです。乳幼児の委託についても、まず経験の豊富な里親さんが一時的に委託を受けて、子育ての経験のない里親さんへアドバイスを受けながら長期委託につなげいくという取り組みも行っています。そうすることで、経験豊富な里親さんがおじいちゃん、おばあちゃんのような役割でサポートし続けることもできるそうです。
静岡市も簡単に里親の数が増えているわけではありません。特に近年は養子縁組を希望する夫婦からの問い合わせが増えているとのことです。ただ養子縁組が可能な乳幼児がそれほどいるわけではないので、養育を必要としている子どもがいることを丁寧に説明し、納得してもらえることを心がけているそうです。このようにして最初は養子縁組を希望している夫婦でも、養育里親として子どもを受け入れてくれる方もいます。
日本全国で、静岡市のように里親支援業務全般を受託している里親支援機関はまだ他にないようです。しかし児童相談所の職員が増え続ける虐待の対応で手いっぱいな中、里親を増やし支援を提供していくためには、行政機関が民間の団体を信頼して協働していくことが不可欠ではないでしょうか。家庭養護のすすんでいるイギリスでは、社会的養護を必要とする子どもの3分の1はこうした民間団体がケアを担当しています。日本でも静岡市のような民間団体の取り組みがより広がることが、家庭で子どもが育つために必要だと感じた訪問となりました。
同センターの先進的な取り組みは全国里親委託等推進委員会の平成26年度調査報告書でも取り上げています。
委託推進のための基盤づくりの先進的な取り組み p91-108
毎日新聞記事 「里親制度、普及への挑戦 委託率全国2位、静岡市」
http://mainichi.jp/shimen/news/20141223ddm013100004000c.html
私たちは、社会と子どもたちの間の絆を築く。
すべての子どもたちは、
“家庭”の愛情に触れ、健やかに育ってほしい。
それが、日本財団 子どもたちに家庭を
プロジェクトの想いです。