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『はじまりの連絡帳』をご利用いただいた方へのインタビュー掲載

真実告知の意義を先生に理解してもらえた

日本財団の「子どもたちを家庭にプロジェクト」では、特別養子縁組家庭と学校をつなぐ 冊子『はじまりの連絡帳』を2021年4月に制作し、無料配布を開始いたしました。この冊子は、家族と共に子どもの成長を支える学校教育現場の先生方に、特別養子縁組家庭の姿、そこで育つ子どもの思いを 知っていただくことを目的に制作したコミュニケーションツールです。今回、実際にご利用いただいた特別養子縁組家庭の養親でいらっしゃる横原(仮名)さん(50歳代女性・東海地方在住)にお話をお聞きしました。

(聞き手/子どもたちを家庭にプロジェクト 新田歌奈子)

里親の会で紹介され「ぜひ活用したい!」

――『はじまりの連絡帳』を知ったきっかけは?

私は児童相談所経由で特別養子縁組をした養親です。現在、子どもは小学校に通っています。『はじまりの連絡帳』は養子縁組家庭や養育家庭の里親の会で紹介されて知りました。拝見してすぐ「これはぜひ活用させてもらいたい!」と思いました。

もともと、保育園に通っていた時期も、保育園の職員さんには特別養子縁組家庭であることをお伝えしていました。小学校に入学してからは、担任の先生、学年主任、教頭先生、校長先生にきちんと伝えておりました。進級する度に、新しい担任の先生、異動で着任された校長先生などにも改めてお話をしに学校を訪問していました。

その際、私たちが特別養子縁組家庭であることだけでなく、特別養子縁組の制度や社会的養護の現状などについてもお伝えしました。実は、学校の先生方はあまりこうした情報をご存じないのです。特に、これまで児童養護施設や養育家庭、特別養子縁組家庭のお子さんを受け持ったご経験がない方は、ご存じない方が多いです。ですから私が説明すると「そうなんですね、知らなかったので勉強になります」と前向きに聞いてくださいます。

―以前から、横原さんは積極的に学校にお話しなさっていたのですね。

養親・里親会の親御さんの中には、学校には伝えないという方もおられます。私たちは子どものためにも、それから同じ特別養子縁組家庭、養育家庭、何らかの事情を抱えたご家庭のお子さんたちのためにも、学校には話をして理解してもらうことが大切だと思っています。だだ、私一人で伺って話しても「なかなか上手く説明しきれない」という思いはありました。

ですから『はじまりの連絡帳』を拝見したとき、「これが助かる」と思いました。特別養子縁組家庭のことやその背景が短くわかりやすく説明されているので、里親制度と特別養子縁組制度の違いなど、私が一から十まで制度の解説をしなくてもよいです。日本財団という信頼できる組織が発行している冊子ということで、とても説得力があります。すてきなデザインで柔らかく表現してある点も良かったです。

「命の授業」について先生方と話し合う

―今回は「命の授業」がきっかけで冊子を持っていかれたそうですね?

うちの学校では、子どもの年齢に応じた「命の授業」が毎年行われています。うちの子ができるだけ傷つかないように「どんな風に授業を進めていかれるのか」、これまでも先生とはお話をさせていただいていました。

2年前の命の授業では、「赤ちゃんの時の写真を持ってきてください」ということでした。しかし、赤ちゃんの時代の写真がない人もいること、あったとしても病気や家庭の事情で持っていきたくない人、いろんな人がいるのではないか、という話をしました。話し合いの結果「3歳~6歳くらいの幼少期の写真」と、幅を持たせた形に落ち着きました。

「赤ちゃん時代の写真」については、先輩の養親さんから苦労したという話を聞いていました。中には違うお子さんのお写真を持参された方もいらしたそうです。何も悪いことをしていないのに、「みんなと違う」というだけで隠さなくてはいけないのでしょうか。周囲がそうだと、当の子どもが苦しんでしまうと思います。

今回も命の授業の数か月前に、『はじまりの連絡帳』持って、養護の先生と担任の先生を訪ねました。これまでは、「特別養子縁組とは?」というところから私が説明しなくてはいけませんが、冊子にわかりやすい記述があって、とても助かりました。当事者の子どもが感じていることなども例を挙げて解説してあり、初めて読む方もすんなり理解できるようです。「横原さんの場合は、真実告知はいつなさったのですか?」など質問をいただき、前向きで深い対話ができました。

『はじまりの連絡帳』があったことで、以前よりも先生方への説明がスムーズにできたと思います。「もし学校や先生に言いにくかったら、こういう冊子を使うと、一歩踏み出せるよ」とお伝えしたいです。

「こんな小さい子に告知をするのですか?」

――先生方からの反応で印象的だったことは?

特に私が理解していただくのが難しいと感じていたのが、真実告知のことです。私は4歳から少しずつ真実告知をしています。冊子をお渡しする以前のことですが、この話をすると「そんな小さい子になぜ告知するのですか? ショックを受けますよね?」と、ほとんどの先生方が驚かれます。

中には「知らなくてもいいのではないですか」とか「そんな小さいうちから傷つけて……」「もっと大きくなってからでも」と、おっしゃる方もいました。「大きくなってからの方が、受け止めきれないこともあるのです」など、丁寧に説明をいたしました。子どもには「お母さんのお腹から生まれていないけれど、お父さんとお母さんの大事な子、一生うちの子だからね」と伝えていることなどをお話しすると、徐々にわかっていただけます。

『はじまりの連絡帳』には、真実告知について、日本財団さんという組織がその必要性や理由などをわかりやすく書いてくださっていたので、先生にもすごく納得していただけました。「できるだけ小さいうち、3歳くらいまでに告知をしていた方が、本人の幸福度が高い」ということは、当事者や支援者にとっては当たり前でも、まだまだ説明が必要だと思います。

先生のお力になれるような情報提供を

――横原さん以外に『はじまりの連絡帳』を使用された方はいますか?

私が仲良くしている養親・里親さんの中に、冊子を持って学校に行かれた方はまだいらっしゃいません。実は「学校には理解してもらえないから話したくない」という方もいらっしゃいます。持って行くか、行かないかは自由ですので、強制はできません。冊子の中にも「親子のコミュニケーションをとるきっかけに使ってください」と書いてありますので、まずはそんな風にお使いになるとよいと思います。

ただ、私はやはり学校の先生方にはぜひわかっていただけるとありがたいと思っています。特別養子縁組についての世の中の理解が進むことを望んでいますが、やはり偏見はまだあると思います。ご近所の方、世間一般の方にまんべんなくご理解いただくのが理想ですが、それでは先が長いと言いますか……。まずは学校の先生方にご理解いただくことが、子どもたちの支えになります。学校の先生は、親以外に接する最も身近な大人ですから。

今の時代、学校の先生方がお忙しいことは重々理解しています。保護者との面談に時間を割いていただくのも心苦しいですが、私としては「先生たちのお力になれるように」という真心を込めて、お話ししたいと思っています。私たち親子に関わってくださった先生は「こうして来てくださると、私たちも知らなかったことがかわるのでありがたいです」と言ってくださいます。お時間をとっていただいて、そのようにおっしゃっていただけること、心から感謝しています。

命の授業も、少しでもいい授業にしていただくために、機会あるごとに『はじまりの連絡帳』を持って足を運ばせていただきたい。義務教育卒業まで続けたいと思います。こうして対話を重ねることで、学校との信頼関係を作っていけたらありがたいと思っています。

冊子を無料で配布しておりますので、以下のフォームでお申し込みください。※個人は10冊まで、団体は100冊までが上限となります。もし上限以上の冊数が必要な場合は別途お問合せください。

フォームが見られない方は以下のメールアドレスまで①「はじまりの連絡帳」ご希望冊数 ②「養子縁組をした親子の762人のこえ」ご希望冊数 ➂送付先郵便番号 ④住所 ⑤団体名 ⑥お名前を添えてご連絡ください。

kodomokatei[at]ps.nippon-foundation.or.jp

※メールアドレスを直接入力する場合は、お手数ですが[at]を@に変えてご送信ください。

私たちは、社会と子どもたちの間の絆を築く。

すべての子どもたちは、
“家庭”の愛情に触れ、健やかに育ってほしい。
それが、日本財団 子どもたちに家庭を
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プロジェクト概要