イベント情報
日本財団ソーシャルイノベーションフォーラムで子どもの家庭養育推進官民協議会の分科会を実施しました!
「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016」が9月28日から3日間に東京港区の虎ノ門ヒルズにて開催され、主催者発表で、3日間を通じた参加者ののべ人数は2,187人となり、非営利活動・社会貢献分野では国内最大規模となりました。
本協議会でも9月29日の分科会(S1)「社会で子どもを育む~里親・特別養子縁組や子どもの貧困を知っていますか~」を実施し、分科会の参加者数は約180名、ほぼ満席で大盛況に終わりました。
開会挨拶の後、サヘル・ローズさんよりイラン・イラク戦争で両親や兄弟を失い、イランの児童養護施設で育ち養母に引き取られて日本へやってきた生い立ちのエピソードが動画で流されました。ご自身の母への想いや養子縁組への思いが語られ、今回のシンポジウムに向けての問題提起をされました。
次にいま日本の子どもたちを取り巻く状況を、実際にこの分野に取り組まれている、認定NPO法人 Living in Peaceの慎泰俊氏さん、ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗さんにプレゼンテーションしていただきました。慎さんから、「深刻なのは母子家庭の貧困。日本の子ども貧困率はOECD加盟国で加盟国ではとても高く、ひとり親家庭については最悪基準である。またご自分が一時保護施設で寝泊りした体験からは、一時保護所内での生活はかなり自由を制限されるものが多い。」と問題点を語り、地域での一時保護委託の役割を果たす例として大阪の『こどもの里』の紹介もありました。改正児童福祉法成立のために、Change.orgでの署名の呼びかけや政策提言などに取り組まれてこられた、土井さんから「児童福祉法改正や育児・介護休業法と最近の動向について、また子どもの権利条約や海外の現状」などを、わかりやすくお話いただきました。
当日使用したパワーポイントの資料はこちらからダウンロードいただけます。
社会的養護の課題の全体像(Living in Peace 慎泰俊).pdf
前半のパネスディスカッションⅠ「当事者から見た現状と課題~いま必要なこと・これから期待すること~」では、社会的養護の当事者団体CVVから、 ヨスさんと高橋成貴さんにご登壇いただき、サヘルさんも加わり、慎さん司会のもとに当事者目線での問題提起がなされました。2歳から18歳まで児童養護施設で育ち、16歳で母親を亡くし、あしなが奨学金を受けて大学に進学したヨスさんは、「奨学金が給付型ではなかったため、社会人になった現在も返済に苦労している。」と給付型奨学金の必要性を訴えました。2歳まで乳児院で育ち、2歳から18歳まで2組の里親に育てられた高橋さんは、「当時は面倒であると思ったこともあったが今は里親に感謝している。最近結婚したばかりなのだが、里親にとても喜んでもらった。『家族』について、いろんな選択肢が増えることはうれしいことだ。また子どもの頃からとにかく『普通』のサラリーマンとしての人生を歩みたいと思い、今実現することができた。」と語りました。二人ともCVVの当事者を応援する活動に出会えてとてもよかったそうで、今後も当事者として言いたくても言えない子ども達の声を届けていきたいそうです。
サヘルさんは、「家庭で育った子どもと比べ、社会的養護下のこどもは大人になった時、自分は何か欠けているものがあるのでは?と感じることがある。大人になった今でもそれを補おうと努力していること、子どもが『家庭』で育つことの必要性を強く訴えました。また観客のみなさんが質問する時間もあり、たくさんの方のご意見を聞くことができました。
後半のパネルディスカッションⅡ「子どもが健やかに育つために社会は何ができるか?どう解決するか?」では、土井さん司会のもとに、三重県の鈴木英敬知事、全国里親会の木ノ内博道さん、NPO法人キーアセットの 渡邉守さんよりそれぞれの立場や思い、課題認識を話しました。
木ノ内さんは「里親制度の認知度アップが必要。もっと世の中の人に『里親制度』を知ってもらいたい。また里親にも、育児休業の取得を認める法改正の必要がある。」と話すとともに、里親月間に全国で配布するハート型のちらし46.000枚(親と暮らせない子供の数)の活動(「NPO法人日本こども支援協会」キャンペーン)の紹介もありました。三重県の鈴木知事からは、「様々な事情で親と一緒に暮らせない子ども達が県内に約500名いる。しかし、まだまだ、里親や特別養子縁組など社会的養護について知られていない。10月の里親月間に三重県でも「里親フォーラム」を開催するが、1人でも多くの皆さんに、このような機会を通して知ってもらいたいと思う。そして、社会的養護が必要なそういう状況にある子ども達が1人でも多く家庭的環境で、特定の大人から永く愛される地域社会にしていきたい。」と話しました。NPO法人キーアセットの渡邊さんは「家庭養護推進のために民間団体ももっと頑張らないといけない。」と話すとともに、東大阪市、豊中市での「はぐくみホーム」での養育里親家庭のリクルート活動とトレーニング、そして子どもが委託されてから支援する活動の紹介もありました。
最後に本協議会の会長でもある三重県の鈴木知事より、「官民一体となって問題に取り組み、情報交換、提言できる本協議会をソーシャルイノベーションの場として今後も上手く活用し、家庭養護を推進していきたい」との決意表明がありました。
私たちは、社会と子どもたちの間の絆を築く。
すべての子どもたちは、
“家庭”の愛情に触れ、健やかに育ってほしい。
それが、日本財団 子どもたちに家庭を
プロジェクトの想いです。