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日本財団助成 全国妊娠SOSネットワーク主催 2024年度「にんしんSOS」情報交換会 イベントレポート~困難を抱える妊産婦へ、質の高い相談支援を~ 前編

全国妊娠SOSネットワーク(以下、「全妊ネット」)主催で、2024年度「にんしんSOS」情報交換会が10月4日(金)日本財団ビル(東京・赤坂)にて開催されました。
第一部は6名の登壇者によるシンポジウムが行われ、第二部は全国から会場に集まった相談員がグループワークを実施。ロールプレイを通して当事者目線での関わり方について研鑽し、相談支援の質の向上を目指した活発な情報交換がなされました。

※当イベントは全妊ネットが日本財団助成事業の一環で実施したもので、今年で4回目の開催です。2024年4月に「妊産婦等生活援助事業」が法定化されるなど本分野への注目度が高まる中、本来当団体会員向けのイベントですが、当財団職員も参加し本レポートをまとめました。

※この記事は前編です。後編はこちらの記事をご覧ください。

にんしんSOSから居場所における自立支援まで

第一部のシンポジウムは「にんしんSOSから居場所における自立支援まで」をテーマに開催。会場とオンライン参加を含めて約90名が参加しました。
冒頭に全妊ネット代表理事の佐藤拓代氏より「乳児の生後0日死亡を予防するためには相談員の皆さんの役割は非常に大きい。この情報交換会で対話を深め、元気をもらって帰ってください」との挨拶の後、登壇者の発表が始まりました。

まず、日本財団公益事業部子ども事業本部長の高橋恵里子より『日本財団の提言と新しい妊産婦支援の公募について』の発表がありました。
「日本財団では2013年より特別養子縁組の普及啓発をきっかけに、妊娠SOS相談窓口への助成、支援団体向けネットワーク会議や研修等に対する助成を行ってきました。2020年からは、相談窓口の普及に加え、困難を抱える妊産婦の居場所の整備に関わる支援も進め、2022年度における助成団体の実相談人数は10,848人、このうち危機的な状況を回避できた相談件数は395件となりました。詳細は提言書をご覧ください。

日本財団公益事業部子ども事業本部長 高橋

今年度からの政府の妊産婦支援を拡充する動きに期待する一方、当財団でも『質の高い相談窓口/居場所の全県設置』を提言しています。この10月にはフェーズ2として『妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立ち上げ』『産前産後の居場所建築(建物の新築または改修)』の助成事業を募集します。全都道府県に満遍なく妊娠SOS相談窓口と居場所が整備されることを目指し取り組みを進めたいと思います」

注目される妊産婦等生活援助事業の内容

次に行政説明として、こども家庭庁支援局家庭福祉課の後藤博規課長補佐より『妊産婦等生活援助事業の内容と期待、今年度の新着情報について、令和7年度特定妊婦等支援機関ネットワーク形成事業』について説明がありました。

「まず、『こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第20次報告)』によると令和4年度中に発生・表面化した児童虐待死亡事例が65例72人で、そのうち心中以外の虐待死が54例56人です。この56人のうち、0歳で死亡した子どもは25人と44.6%と高い割合を占めている。当分野の支援強化が急務ということで、こども家庭庁は今年度『妊産婦等生活援助事業』を法定事業としました。
家庭生活に困難を抱えている特定妊婦や出産後の母子等に対する支援の強化を図るため、一時的な住まいや食事の提供、その後の養育等に係る情報提供や医療機関等の関係機関との連携を行うことを目的としています。実施状況としては、令和6年5月1日時点で18自治体、20か所で実施されています。

こども家庭庁 支援局家庭福祉課 後藤課長補佐

続いて、次期都道府県社会的養育推進計画についてですが、次期計画(令和7~11年度が対象期間)の策定に向けた現行策定要領の見直しがあり、今回、記載事項として『支援を必要とする妊産婦等の支援に向けた取組』が新設されています。
令和7年度の概算要求については、社会的養護関係で4つの柱を打ち出していますが、このうち2項目が当分野に関係します(『社会的養護経験者等や家庭生活に支障が生じている特定妊婦への支援の強化』と『児童養護施設等における職員の人材確保策の推進や養育機能の向上』)。また、『特定妊婦等支援機関ネットワーク形成事業(仮称)』は、妊産婦等生活援助事業には様々な担い手がいる中で、関係機関が集う全国フォーラムを通じて各種機関が全国的に連携していただけたらと考えています」

続いて、母子保健推進会議会長でもある全妊ネット代表理事の佐藤氏より『妊産婦等生活援助事業のガイドラインを踏まえての新しい展開』について発表がありました。

「こども家庭庁が出した『妊産婦等生活援助事業ガイドライン』(※筆者補足:当該事業実施団体が手引きとして参考にすることを目的としたもの)の中で、注目すべき点は『対象者』です。運用において『親族や居宅はあるが貧困や産前・産後の生活環境に課題があり、安心して安全かつ健全な生活を営むことが困難な者についても広く対象とする』とあります。また、『出産するか否かにかかわらず広く対象とした上で適切に判断』という部分も大事だと思います。

母子保健推進会議会長 全妊ネット代表理事 佐藤氏

さらに、妊娠葛藤相談における支援内容として『産む・産まない、育てる・育てないに関わらず、不安や悩み等話を聞き、意向に寄り添い相談者が主体的に選択できるよう一緒に考える』ことも示されました。上から目線での支援は絶対にやっていけないことです。また、『当該支援を受けることへの負の感情や拒否感、支援者・周囲からの差別・偏見が生じないように配慮する。相談者の心情に寄り添い、支援者から意見を押し付けることや相談者を突き放すことなく人生を受け止めるよう務める』というような視点が出てきていることが本当に素晴らしいと思います。第20次報告の死亡事例の検証報告や本ガイドラインを貫くのは当事者目線の内容。妊娠SOSに関わる方はぜひ当事者目線の関わりをしていただきたいと思います」

続いて全妊ネット事務局より『妊産婦等生活援助事業のガイドラインを加味したアセスメントシートと経過記録の紹介』がありました。

全妊ネット事務局 田中氏

「kintone(キントーン:サイボウズ株式会社が提供するサービス)を利用して、妊産婦等生活援助事業ガイドラインに基づき必要な情報の収集・共有・管理など、日々の業務に使用できるアプリを全妊ネットで開発しました。相談者のカルテや日々の記録が一目瞭然でセキュリティも高く、データ集計やアセスメントにも利用しやすいものです。今後導入希望の団体向けの説明会も予定しています」

自治体同士、民間同士の連携が必要

最後に全国母子生活支援施設協議会の齋藤弘美副会長より『施設から見た妊娠期からの居宅支援の現状と課題について』の発表がありました。

全国母子生活支援施設協議会 齋藤副会長

「母子生活支援施設による妊産婦等生活援助事業が進みにくい課題として、大きく3つが考えられます。1つ目は多機能化に対する不安、近隣に病院がない、など施設の課題。2つ目は行政との課題。母子生活支援施設の半分は公設民営のため行政や法人と意向が合わないと事業が実施できない中、母子生活支援施設を活用した妊産婦支援や多機能化の認識がない県も多いのが現状。また、行政は独自のルールを持つ傾向もある。現行の一時保護だけで足りるという考えから脱却できないと質の確保は難しいと思います。
3つ目がネットワークの課題で、これは医療機関からもお困りの声が聞かれる。飛び込み出産の場合、産後数日程度で退院になるわけだがその後のつなぎ先が見つからない。また、本人も悩む時間が十分にないまま、場合によっては子どもを手放すこともある。
精神面などで心配な妊婦が多く、出産前から場所を転々と変わることなく、支援者が出産に寄り添う中で考える時間を持てるようにしたい。医療機関との連携も行政と一緒に考えていかなければいけないと思います。

また、当事者には居住が不安定な方が多く、相談をキャッチできても、住民票が今いるところになくて支援が受けられない場合もあります。一方で、住民票所在地には(事情があって)戻れない、また、そちらに適切な支援制度がないこともある。広域連携について対応を決めていく必要があります。
母子生活支援施設という支援付きで親子が住める空間を使うことで良い環境を提供できるのではないか、相談と居住等支援をつなげていくことが大切だと思います。市区町村と都道府県との連携、行政同士、民間同士の連携が必要です」

※この記事は前編です。後編はこちらの記事をご覧ください。

私たちは、社会と子どもたちの間の絆を築く。

すべての子どもたちは、
“家庭”の愛情に触れ、健やかに育ってほしい。
それが、日本財団 子どもたちに家庭を
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